2020年7月16日木曜日

不条理

何日か前の新聞記事に、「突然、私たちに降りかかったコロナ禍」とあり、これを「不条理の象徴」とし、関連文学にカミュの「ペスト」あげていた。
(参考までに、不条理作家にはもう一人、「変身」のカフカという作家がいて、その違いはカミュが集団への不条理を描いたのに対し、カフカは個人への不条理を描いている。)

さて、不条理文学の代表者として、カミュの名が出てきたことにはまったく異存はないが、日本人作家にも忘れていけない不条理作家がいるのである。
高校では二年生の教科書で取り上げられる「山月記」の作者、中島敦だ。

そう、「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」の作家である。
「山月記」では、主人公の李徴が虎に変身した理由を、李徴の性癖としてあげているが、「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」程度で虎にされてはたまらないではないか。
これはまさしく「不条理」が働いたのである。
「不条理」というのは、読んで字のごとく理由がない。
それこそ「突然、私たちに降りかかる」のである。

中島敦の不条理作品には「牛人」という「山月記」以上に強烈なものがあるが、高校生諸君、ぜひこの作品も試してみてくださいな。
おおー、今日はまるで国語の先生みたいなことを言ってしまった。

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