2018年6月12日火曜日

百合

御殿場の市立図書館に咲いていた百合である。

ワタシは百合の花を見ると「百」と「合」と言葉から、いつも夏目漱石の「夢十夜(第一夜)」を思い出す。
百合とは、百年たったら合う(会う)ことなのである。

「夢十夜」の一部を抜き出すとこんな感じだ。

すらりと揺ぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹えるほど匂った。そこへ遥の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る、白い花弁に接吻した。自分が百合から顔を離す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁の星がたった一つ瞬いていた。「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。

非常にファンタスティックな話であり、最初にこれを読んだときには「あの夏目漱石がこんな小説を」と変なショックを受けたものだ。

簡単にあらすじを書くと、女が(どういう経歴の女性かはまったく書かれていない)「百年、私の墓のそばに座って待っていてください。きっと会いに来ますから。」と言って死ぬ。そして、女を埋めたところから百合が咲く。
「自分」は百年が過ぎたことを知った。

といった按配である。

まあ、夢の中の話であるから「不思議さ」は付き物であるのだろうが、何はともあれ妙に印象に残る小説なのである。







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