2020年5月31日日曜日

「む」と「ん」



明日からいよいよ授業の開始である。
授業を実施するにあたり、いくら何でも事前に教科書ぐらい見ておこうと思い、久しぶりに教科書を開いてみた。

明日の授業、一年生古典の教科書には最初に宇治拾遺物語「児のそら寝」の教材が出てくる。
その中に、「いざ、かいもちひせむ。(さあ、ぼたもちを作ろう)」という部分あるのだが、生徒にこれを音読させる場合、「せむ」を「せん」と読ませなければならない。
古文を読む原則として、助動詞「む」や助詞の「なむ」などの「む」で終わるものは、「ン」と読むからだ。
と、ここまでは良いのだが、ではなぜ「む」を「ン」と読むのかの説明となると、これがなかなか厄介なのである。

「む」が「ン」と読まれる現象は、由来が音便でありながら元の発音は廃れてしまい、元の表記のままで発音が変わるという、転呼(仮名がその置かれた位置、条件によって本来の発音とは異なって発音されること)と同じ性質を示すものである。
これは、「ム」と「m:」と「ン(/N/)」が日本人にとつて非常に紛らわしい発音であつたために、音便化させている意識のないままに発音が変化した現象だと思われる。

要するに、かつては「む」を「ム」と発音していたのだが、日本人にとって「む」と「ん」は紛らわしい発音であったため、「む」は「ん」と音便化したのだが、文字の「む」の方は、そのまま残ってしまったということだろうか。

さて、「む」と「ん」の表記については、こんなこともある。

「新宿」も「新橋」も同じ「新(しん)」なのに、なぜ「ん」の表記が「n」 と「m」 に分かれるのか?「Shimbashi」と「Shinjuku」のことである。
写真でも分かるように、JR山手線の駅「新橋」は「Shi」のあとは「n」ではなく「m」が入っているのだ。
それについてはこのような説明がなされる。
「ん」の後ろに「ば行、ぱ行、ま行」の音が続くときに「ん」は「m」になる。
「ば行」も「ぱ行」も「ま行」も発音するときは上と下の唇がくっつく。したがって、その前に「ん」があると、私たちは無意識のうちにその「ん」も口を閉じて発音している。「ん」は上下の唇がくっつかない。口を開けたまま発音する。そこで、これらの「ん」は 「n」 の表記となる。

これは発音する時の唇の問題であり、ローマ字の「ヘボン式」というやつに由来しているらしい。

日本人にはなかなか難しいところである。

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