「葦の穂風の行きたい方へ行く」
この句は書のSさんの方から提示された。
書は斬新である。
一枚の紙を真ん中で切断、それをずらして置き、ずらしたまま一気に書きあげている。
これは「オレはやりたいことをヤルゾ」宣言のような気もする。
一方、この注文を受けたワタシはちょいと迷った。
この句の中心は勿論「行きたい方へ行く」である。
考えた挙げ句、体育祭のムカデ競争で表現することにした。
ムカデ競争は言ってみれば「行きたい方には行けない」競技である。
しかも、ひもで繋がった集団は自分の動きも拘束されてしまう。
しかしながら、この集団はゴールに向かっているのだ。
「行きたい方に行けない」ことを犠牲として、ゴールインすることができるのである。
それに比べ、「行きたい方に行く」人間、それはゴールにたどり着く保証は得られない。それは生涯たどり着くことができないかも知れない。
しかし、彼は言うのである。
「行きたい方へ行く」
▽葦の穂風の行きたい方へ行く・草木塔
▽葦の穂風の行ける方へあるいてゆく・昭和十三年・「層雲」発表句
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