「日の光ちよろちよろとかげとかげ」
「草木塔」の「雑草風景」の見出しのある句である。
前後の句は
「月がいつしかあかるくなればきりぎりす」
「木かげは風がある旅人どうし」
「日の光ちよろちよろとかげとかげ」
「月のあかるさがうらもおもてもきりぎりす」
である。
「日の光」はとかげで「月の光」がきりぎりすとなっている。
確かに「日の光」がきりぎりすで、「月の光」がとかげでは妙な句となってしまう。
それは「ちよろちよろ」という擬態語にある。
とかげの素早い動きは「月の光」では追うことができないからだ。
いずれにしても、山頭火の小動物に対する優しさが感じられる句である。
さて、書のとかげは、字の傾きが右斜めであったり左斜めであったり、いかにもとかげのちょろちょろ感を出している。
一方、写真の方は、臍曲がりのワタシゆえ、敢えて逆にしてみた。
羊の句同様、札幌の丸山動物園で撮ったものである。
このとかげ、ちよろちよろとはかけ離れた動きであった。
いや、動きというよりも静止に近い。
余談。
この句をジーッと見ていたある人が言った。
これは「ちよろちよろ、とかげとかげ」ではなく「ちよろちよろ、かげと、かげ」ではないですか?
一瞬「ギクリ」である。
しかしながら、昭和十年「層雲」に発表した句の中に「日の光ちよろちよろと とかげとかげ」の句があるので、「かげとかげ」ではないことが確認された。
良かった。、良かった。
0 件のコメント:
コメントを投稿