2013年5月11日土曜日

やけくそ

今日、国語科準備室において、「やけくそ」ということばが話題になった。
漢字で書けば「自棄糞」である。
「焼け糞」が本来の書き方であるのだろうが、こう書くとどうも下品なのだ。
だから、「自棄糞」にしたのか?
(「くそ」を「糞」と書く時点でもう十分下品なのだがね。)
「自棄糞」は、「やけになる」の「やけ」が「どうにでもなれ」という意味なので、「自暴自棄」の「自棄」を当てはめたのだろうが、これはあくまでも当て字に他ならない。

新明解国語辞典によれば「やけになる」の「やけ」は(一度焼けてしまった物は取り返しがつかない事から)どうしようもない結果に心の平静を失い、ついに不摂生を重ねたり、むちゃな事をやったりすること。
とある。
つまり、「やけくそ」の「やけ」は、やはり「焼け」なのである。
しかし、「心の平静を失う」ことと、「くそ(糞)」がどうして結びつくのだ。
これは結びつくまい。
とすると、「やけくそ」は「焼け糞」となり「糞」を焼いたものなのだろうか。「糞」を焼いて一体何に使用するのだ。
考えれば考えるほど、「?」が付き纏う。

そこで「くそ」を調べてみた。
「くそ」は「糞」で間違えがないのだろうが、この「くそ」もなかなか奥深い言葉だ。
基本は勿論「大便」の意味であるのだろうが、二番目として、人を罵って言う語。(自分の気持ちを奮い立たせる時にも用いられる)ともある。これなどはプラス方向の語ではないか。
さらに三番目の意味として、
①その存在を呪わしく思う気持ちを表す。
②常人ばなれがしていて、むしろイヤになる気持ちを表す。
③その語の持つ否定的な意味を強めることを表す。
とある。

つまり「焼け糞(やけくそ)」とは、「どうしようもない結果に平静心を失い、呪わしく、イヤになり、否定的な気持ちとなること」である。
決して下品な言葉ではないのである。

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