2013年9月13日金曜日

大和物語

明日の土曜講習では「大和物語」を講義する予定であるが、講義する箇所はなかなか面白いところだ。

小野小町が清水寺に参詣したところ、どうも昔の知人のような気がする法師(実は昔馴染みの僧正遍照)を見つける。
小町は確認しようと、次のような歌を贈ってみた。

・岩の上に旅寝をすれば いと寒し 苔の衣を我に貸さなむ
「岩の上で旅寝をしているので、たいそう寒いのです。(あなたの)僧衣を私に貸してほしい。」

すると、その僧から見事な返歌がある。

・世をそむく 苔の衣はただひとへ かさねばつらし いざ二人寝む
「世をそむい(て出家し)た私の僧衣はただ単衣(ひとえ)です。(しかし)貸さないとあなたには、薄情と思われる。さあ、二人で一緒に寝ましょう。」

「これは間違いなく遍照である。」そう思った小町は、人に探させるが、遍照の姿は消えてしまったのであった。
「いざ二人寝む」ですぞ。
「む」は意志を表す助動詞だ。
何という思わせぶりな歌なのだろう。
さすがに「あまつ風 雲の通い路 吹き閉じよ」の作者である。










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