今、平行してして3冊の本(「意味がなければスイングはしない」村上春樹・「現代ジャズ解体新書」中山康樹・「芸術とは何か」千住博)を読み始めた。
最近、頭も適当に惚けてきているので、3冊いっぺんに大丈夫かいな?と聊か不安ではあったのだが、読み始めてみると、3冊同時読書、これが意外に面白くて、久し振りに読書の快感を味わっている。
まずは村上春樹から。
彼がかつて「ステレオサウンド」というオーディオ専門誌に連載していた小品をまとめたのが「意味がなければスイングはしない」である。
タイトルからして彼らしい。
話はシダー・ウォルトンという渋いピアニストの話から始まる。
このピアニストは、申し分のない実力とキャリアを兼ね備えた人だが、多くの熱いファンの注目を浴びるような機会は、これまでの所一度もなかった。
野球選手でいえば、パリーグの下位球団で六番を打っている二塁手・・・・・
言い得て妙である。
実力はあるのに目立たない、これがシダー・ウォルトンなのだ。
私もかつてG南高に勤務していた時に、同僚のジャズ好き先生から紹介されるまで、まったくその名をしらなかった。
しかしながら、聴いてみると上手いし、心にグイグイはいってくるのだ。
そして、村上春樹は右の写真「PIT INN」というアルバムにふれた。
1974年、彼が新宿のライブハウス「ピットイン」で、生の演奏を聴いた時のことを書いている。
その時僕は二十五歳で、生意気な能書きで頭がいっぱいのいっぱしのジャズマニアになっていた。僕はそのとき、シダー・ウォルトンというピアニストにそれほど関心を抱いていたわけではなかった。それまでのリーダー・アルバムを聴いたかぎりでは、とくに傑出したピアニストとも思えなかったからだ。
ところが実際に目の前で聴いてみると、この演奏がびっくりするくらいホットで鮮烈なのだ。
・・・・・天才肌のワイルドなジャズ・ミュージシャンもたしかに魅力的だが、シダー・ウォルトンのような実力のある「隠し味」的な人がいてこそ、ジャズの世界にもそれなりの陰影と奥行きが生まれてくるのではないだろうか。
おおー、その通りだ。
天才ばかりが世にあふれたならば、世の中とんでもないことになってしまうだろうね。
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