2013年7月19日金曜日

影をやは踏まぬ。

現在、三年生の古典の授業では、「大鏡」を講義している。
「大鏡」という作品は、藤原氏に対して批判的な作品と云われているのだが、道長に関しては批判というよりも、むしろ「彼は幸福者である」というニュアンスが強い。
授業で講義するところは、道隆・道兼・道長の三兄弟が父親の兼道に、バカにされる場面である。
兼道は、この三兄弟を藤原公任(きんとう) 
と比べて、芸がないことを批判する。
「わが子どもの影だに踏むべくもあらぬこそ口惜しけれ。(自分の子どもたちが公任卿の影さえ踏めそうにないのは残念だ。)」
すると、歳が一番下である道長がこう言う。
「影をば踏まで、面をやは踏まぬ。(影は踏みませんが、いつか面を踏みつけてみせましょう。)」
すごいね。「面をやは踏まぬ」である。
この部分は反語なのだ。「面をふまないだろうか、いや必ず踏みつける。」である。
果たして、道長は関白となり、公任を圧倒するのである。

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