2017年10月12日木曜日

「お山しんしんしずくする眞實不虚」

「お山しんしんしずくする眞實不虚(しんじつふこ)」

昭和十四年四月二十二日・鳳来寺山拝登の時の句だ。
「眞實不虚」とは「般若心経」の第十八章にある文言である。
単純に考えれば「真実に嘘はない」ということになる。
ただこれでは何を言いたいのかよくわからない。

「真実に嘘はない」のは「すべてが真実」であるからなのだろう。
「すべてが真実」であることを実感できないのは、これが真実これが嘘という「こだわり」を持っているからである。
したがって、自分の「こだわり」を捨て去れば、「真実も嘘」もなくなるのである。

さらに、「眞實不虚」は「能除一切苦」にかかるフレーズだとも言う。
「能除一切苦」は、すべての苦しみを取り除くことだろう。
そうに考えると、「こだわり」を捨て「真実も嘘」もなくなれば、すべての苦しみから解放されるのである。
山頭火はしんしんと静まりかえる山の中で、一体何を思ったのであろうか。

さて、書の方は右の平仮名を主にした部分と、左の漢字の部分に分けて書かれている。
真ん中の空間が何とも言えない味を出しているのである。
これが彼が常に口にしている「間」なのだろう。

一方、写真は石仏にしてみた。
御殿場の「とらや工房」の庭にあった石仏だ。
画面では二体で写っているが、実はこの石仏、ひとつの石に二面で彫られた珍しい石仏なのだ。
最初は左の石仏だけを展示しようと思ったのだが、「真実不虚」という言葉から、これは二面の方がフィットすると考えて、小さい額に入れて二体にしてみた。
背景の緑も鮮やかなのである。

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