今日の夕刊には三島関係の記事がいくつか載せられていたが、その中でも美学者谷川渥氏の説明する「三島美学」は、秀逸であった。
氏は、三島の美学を「薔薇の花」で例える。
「薔薇の花弁は折り重なって、内と外があやふやになっている。これはつまり、内面と外面があるということの否定であり、すべては外面であるというのが三島の思想なのだ」と。
そしてこの美意識の背景にはニーチェの哲学があるとも。
「人間の真実が内面にあるとか、表側は嘘だけれど裏側に真実があるとか、そういう考え方をニーチェは『背後世界論』といって否定した。」
さらにいう。「三島は30歳から肉体を鍛え始め、自決する45歳までひたすら表面を築きあげようとした。最後に選んだ割腹というのは、内臓をさらけ出すこと。内と外の二元論を、血を出すことによって破ろうしたのである。自らの美意識に殉じたかのように。」
50年前のこの日、ワタシは大学一年生であった。帰宅途中の電車の中で、前の座席に座っていた人が号外の新聞を読んでおり、その一面に出ていた大きな写真の片隅に、人の首がころがっていたことを今でも思い出す。
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