2017年8月10日木曜日

明視の距離

寺山修司(劇作家・歌人・小説家・劇団主催者と幾つもの顔をもつ)が、「青蛾館」というエッセイ集の中で、「明視の距離」について述べていた。

「明視の距離」とは、我々が本を読む時の、本と目の距離である。
この距離がないと、我々は本に書いてあることが理解できない。
本からの距離が遠すぎると、字が読めない。
近すぎると字はぼやけてしまう。
つまり、我々が本を理解するためには、凡そ二十五センチの「明視の距離」が必要なのだと。

さて、このことは人間と人間の関係についても同様である。
その人間を客観的に理解するには、ある程度の距離が必要なのである。
肉親のように、きわめて近い人間では情が入って、客観的な理解はできまい。
かと言って、初めて会った人が、自分のことを理解しているかというと、これも無理なことである。
自分のことを客観的に理解してくれる人とは、自分に対して適正な距離を持った人に他ならないのである。



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