2016年2月4日木曜日

二次試験過去問題より

二元性を基底にもつ西洋思想には、もとより長所もあれば短所もある。
個々特殊の具体物を一般化し、概念化し、抽象化する、これが長所である。
これを日常生活の上に利用すると、すなわち工業化すると、大量生産となる。
大量生産はすべてを普遍化し、平均にする。
生産費が安くなり、そのうえ労力が省ける。
しかし、この長所によって、その短所が補足せられるかは疑問である。すべて普遍化し、標準化するということは、個々の特性を滅却し、創造欲を統制する意味になる。

(鈴木大拙「東洋文化の根底にあるもの」)


これは2009年度の「一橋大学 前期二次試験」に出題されていた文章の一部だ。
一橋大学の問題はいつも読み応えのある良問だ。

西洋文化の根底には「分けて制する」という思想がある。それは世界を認識する主体と、認識される客体とに知的に分割するところから始まる二元的世界観である。この世界観は人類の知識を発展させる一方で、対立と闘争の社会を作り出した西洋思想の長所と短所がある。

まず、こう振っといて東洋思想を述べる。

東洋の文化にはこういう分割的知性が見られず、むしろ知性発生以前の老子や荘子などの根源的世界への関心が強い。
そしてそれは万物を生成する母にたとえられた。
西洋の宗教は、力と律法と義で世界を統御する父を神とするが、東洋文化の根底には、無条件の愛ですべてを包容する母性が存在する。

二元的世界では、人間は常に緊張を強いられることになるのです。







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