2021年8月14日土曜日

奥山に


再び百人一首の話である。

「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき(奥山で、地面に散り敷いた紅葉を踏み分けて鳴く鹿の声を聞く時、秋はなんとも物悲しい)」

これは百人一首の中でも特に有名な句のひとつだ。

作者は「猿丸太夫」・・・と言われている。と言われているというのは、「猿丸太夫」なる人物は実在が疑われている人物なのである。

彼については、京で土器を売り歩いていたところ、歌が上手いので朝廷に召されて大夫となり、顔が猿に似ていたので「猿丸太夫」と呼ばれたという伝説もある。また「猿丸太夫」は確実に本人が詠んだとされる歌が一首も残っておらず、「奥山の」の歌は、古今集では「詠み人知らず」になっている。

さて、百人一首の話にもどるが、百人一首はこのような「由緒正しくない人物の歌」も載せてしまうところがエライのである。

さすが定家なのである。


 

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