私は毎朝、朝刊に掲載されている夏目漱石の「それから」を読んでいる。
今朝は、主人公「代助」が友人の妻である「三千代」に自分の気持ちを伝えた後の場面であった。
今までの「代助」の生き方というのは、「熱烈を厭う、危うきに近寄らぬ、勝負事を好まぬ、、用心深い」と言った生き方であった。
それが人妻に告白をしたのである。
小説ではそのときの気持ちを「マウンテン・アクシデント」という外国雑誌に記事(山での遭難事故)によって説明する。
「そのとき代助は、その絶壁の横にある白い空間のあなたに、広い空や、遥かの谷を想像して、怖ろしさから来る眩暈を、頭の中に再現せずにはいられなかった。」
さて、「代助」が引用した「マウンテン・アクシデント」の中には、次のような事故も載せられていた。「登山の途中雪崩に圧されて、行き方知れずになったものの骨が、四十年後に氷河の先に引っかかって出た。」
うーん、四十年後か。
と思っていた矢先、つい最近のニュースに「日本人2人の遺体、45年ぶりに発見 アルプスの氷河解け」という記事があることが分かった。
この日本人2人は、1970年、アルプスのマッターホルン(標高4480メートル)登山に挑んでいて遭難した。激しい雪のために捜索は打ち切られ、その後も痕跡は見つかっていなかった。
しかし、昨年になって氷河のふもと標高2800メートルの地点で白骨化した遺体と登山具が見つかり、DNA鑑定の結果、行方不明となっていた日本人登山者ということがわかった。
偶然とは言え、漱石の小説に出てきた話と最近のニュースが同じような話であることに、まず驚いた。そして次に夏目漱石が遭難事件を小説に使用していたことに驚いた。
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