三年生のセンター演習のテキストの中に、稲垣貴士「音のリアリティー」から引用した評論文問題がある。
これがなかなか面白い。
彼は言う。
「音は、聴くという以前に視ているのだ。」
「音は音源となるものの視覚的イメージに結びつこうとする。視覚によって音を聞く、この典型的な例が、映画やテレビの効果音である。」
つまり、人為的に映像につけられた音は、その映像の音として了解されるのだと彼は言うのである。
さらに彼は続けて言う。
「SF映画の宇宙船の飛行音も、真空である宇宙空間の中で音が聞こえるのか、という素朴な物理的疑問以前に、スクリーンの中の巨大で高速に飛行する物体から発せられた音として了解される。」
これは、現実には存在しない物体の視覚的イメージが、もともとの音源から切り離された音と結びつき、映像のコンテクストによって新たな記号作用を担うようになるからだと。
うーん、音は視るものなんだ。
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