「この御にほひには並び給ふべくもあらざりければ」
ここは、生まれたばかりの「光源氏」の容貌を説明している場面だが、面白いのは「御にほひ」である。
「御にほひ」とは、現代語の「臭い」とは異なり、赤ん坊の容貌を表現した言葉で「美しい御容貌」と訳す。つまりここでは赤ん坊の見た目について、「にほひ」という嗅覚表現をしているのだ。
実は「にほふ」はもともと視覚的な美しさを表すのに用いられ、「かほる」が「よい香りが漂う」の嗅覚的意味を持っていた。
「にほふ」の「に」は「丹色(にいろ)=赤」の「に」であり、「ほ」は「秀」であり、「抜きんでている」の意を持ち、そこに「ふ」を加え動詞化する。 すなわち、「にほふ」とは「赤い色が美しく見える」ことなのである。
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